2024.2.8

新しいものにすぐ飛びつけないタチだから必然的に同じものを買ったり読んだりする機会が多い。

すっかりセリフを覚えているアニメがいくつもある。本棚のラインナップもさほど変化しない。靴や服はボロになったら同じものをまた選んでしまう。世の中にはあまたの作品やモノがあるというのに、知らないだけできっと面白いだろうにと分かっていても選べない。選ぶとしても、たくさんの時間がかかる。きっと損をしている。でも「損してるよ」と言われたら腹が立つ気がする。

これを書きながら宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い出す。小学生の頃、父の本棚にあったのを初めて読んで、上京するときに貰って、今は私の本棚のよく見えるところにしまってある。とても古い装丁で本体も茶ばんでいる。

初めて読んだとき、たしかカムパネルラが死んだということを分かっていなかった。透明できらきらした銀河をジョバンニが、カムパネルラが、よく分からない人達が渡っていく印象しかなくて、配達される牛乳や大きな食パンや角砂糖に憧れを抱いていたと思う。中高校生くらいのときに何となく読み返して、初めてカムパネルラが死んだことに気がついて驚いたような記憶がある。カムパネルラって死んだんだ、死んだってことなんだ…と放心したような気がする。はるか彼方の記憶だけれども衝撃だったことは覚えている。

最近また読み返している。読めなかった漢字や難しいと思っていた言葉はいまではすんなり肌に馴染み、読むたびに私は銀河鉄道の夜に溶け込んでいる気がする。

同じものに対して、時間をかけて何度でも向き合うことで得られる新しい感覚が好きだ。もちろん、新しくて新鮮な感覚も好きだけれども、前者には後者が到達することのできない理解や愛があるような気がする。気がしてばっかりの日記だ。